既存不適格の新築増築をした古家の建て替え|思い出のある土地に新築の建築計画はどうなる?!
今回のご相談の場所は、どことは言いませんが。
こちらも中尾建築工房で家を建てた、OBオーナー様経由でのお話がありました。
なんでも、オーナーのお友達が家を建て替えたいとの事。
思い出のある日本庭園を残したい。
その昔、新しく建てた家を増築した。
なので。
まずは先に建てた方を建て直し。
後から、増築した家も建て替える。
そんなご要望がある様でした。
なるほど。
んじゃ、見て来っかーと言う事で。
さっと、見て見る事にしたのです。
実はグーグルアースやグーグルマップで見た段階で。
超絶鋭い中尾センサー、ピコーンっ!!
100%の点灯力で、赤いサイレンがクルクルと発動しております・・・
※中尾センサーとは?
業歴長いのもあるけど、元々私は直感を信じて生きて来ました。
中尾センサー=野生の勘と言いまして。
今までの人生で、私の直感が外れた事は一度も無いんです。
それくらい、センサーの感度は高いと言うことですね。
ではまず、建築基準法の中で。
この家の問題に該当する部分を挙げてみよう。
一敷地一建物
建築基準法施行令第1条
敷地とは
一の建築物又は用途上不可分の関係にある二以上の建築物のある一団の土地をいう
これは。
一つの敷地には一つの建物しか作ってはいけません。
と言う建築の法律です。
これに対して例外となるのが。
用途不可分の建物なら、建てても良いよー
と言う法律もある。
用途不可分を分かりやすく説明すると、母屋と離れの関係になるのね。
例えば。
悪ガキが約1名、その家に居りまして。
親なんてバカヤロー!
ジジイとババアと一緒になんて、住んでたまるかっ!!
と、悪ガキが言ったとしましょう。
困った悪ガキです・・・
仕方ないから母屋から廊下で繋げて、悪ガキの為の部屋を建てるか?
そのかわり、悪ガキ一人が不自由なく生活出来るのは困るから。
トイレやキッチン、お風呂なんて作っちゃダメよ。
でないと用途不可分ではなく、用途可分と言う表現に変わってしまう。
あくまでも部屋としての機能だけに限ってなら。
用途不可分が成立するって事になる。
この他、渡り廊下を作ってなどと。
すり抜ける方法があったりするけど。
今回のお宅に関して言えば、それは使えない・・
なぜなら。
この二つの家は、どちらも確認申請と言って。
こーゆー家を作りますよー
と言う申請は成されてる。
けれども。
こーゆー家が出来上がりましたよー、図面と間違ってないかチェックしてー
と言う.
完了検査を受けていない。
実は絶対そうだろうな・・・
そう思った私、横浜の建築局に行って。
この土地に建つ、二つの家の建築計画概要書を取得してきました。
グーグルアースやマップ、実際にある家。
それを私の目から見る限り。
この概要書と、実際にある家は。
微妙に同じ形では無い。
だからはっきりと言えるんですけどね。
完了検査を受けていないと言う事は、完了検査の合格証が無いから。
既存適格な住宅とは呼べずに。
これらの家は、全て既存不適格の住宅。
と言う扱いになる。
例えば、この家をこのまま人の手に売るとしましょう。
そしたら、住宅ローンを組まれる買い手が居たとしても。
既存不適格の住宅だから。
お利口さんな人たちの多い銀行としては。
不適格なモノに、自社の抵当権は付けたく無い。
つまり、住宅ローンは貸さない。
と言う事になる。
更地にするなら別の話なんですけどね。
これ、なんでこんな風になっているかと言えば。
昔も今も、建築設計事務所が確認申請の業務を、施主の代理で行っているのは変わらず。
けれども。
昔って、現場を管理する施工管理が居ない状態が。
昔だけに、多々あったのです。
では誰が現場をまとめるかって言うと、大工さんでした。
当時の大工さんは、職人の中では自分が一番の頂点と言う存在だと思い込んでたから。
建築設計事務所の図面通りに作ると言うよりも。
図面とは変えてしまって、作ってしまう傾向がありました。
階段なんかは特にそう。
なぜか急勾配の階段にしてしまって、安全性に欠ける家を建てるのは得意だったんですよね。
そのかわり、立派な柱を使ったり。
こだわりを出すのは得意な人たちでした。
そして、当時の大工さんは大工工事の見積もりは出来ても。
他、職方さんたちの見積もりは超がつくほど苦手な人たち。
だから、いろいろと注文をつけた後。
職方さんから上がって来た、請求書を見てビックリして。
それをそのまま施主に出すから。
施主さんとしても、契約時よりも請求される金額が多くなるから。
いつの間にか評判を落として、ハウスメーカーに仕事を奪われる様になりました。
そんな過去を知る者として、私は。
絶対に後出しをするなっ!
と、どんな注文を受けたとしても、必ず答えを先に出す様に。
スタッフには教育をしている訳なのです。
とまぁ、話は若干反れましたが。
この様な御時成でしたので、建築設計事務所としては。
完了検査を受ける必要があると分かっていても。
実際に作っているモノが違うから、合格しない事も分かってる。
だから、完了検査を受けられない。
そんな悪循環が古き時代には、多いにしてありました。
その影響が今になって来るのが、既存不適格。
既存不適格な家をいじくる為には、既存適格にする必要がある。
その為には、現在の延べ床面積が既存と適合している事。
建蔽率容積率が用途地域で定められている大きさ超えていない事。
そしてその半分以内の建て替えであれば。
まずは残す家の方を既存適格にする為に、図面を作ります。
そして、壁の耐力や構造なども。
室内の壁がある状態では分からないから。
全ての壁を、身ぐるみ剥がして調べる事。
その上で、きちんと適合する住宅にする必要があるのだけど。
おそらく、先に壊したい家の方が大きいので。
確認検査機関が定める、既存床面積の半分以内には収まらない。
であれば。
今回の相談者の方は、他にも住居があるみたいだから。
とりあえず、そちらに越して頂いて。
一気に双方の家を取り壊して、建て直しを計った方が。
この土地の資産としても、良いだろうし。
今回の建て替えで、完了検査は受けられるから。
土地も建物も適合する住宅&土地になる。
売らないだろうけど、売りたくなったらすぐに売れる。
資産価値としても、間違いなく良いでしょう。
それに。
庭の庭園部分の残し方についても。
庭園のある南面には、隣地の家がガッツリと建っているから。
このまんまの配置では、この土地の持つ特性を最大に活かせるとは言えない。
一部でもコートハウスの様に、坪庭や。
中庭などを新築計画で採用して、南面から建物を後退させる事によって日差しは取り込める。
そして移植して、水やりなどもやりやすくした方が。
今回の建て替え計画では、庭園自体も。
樹木も、より活きて来ると思います。
もしも、そうするのであれば。
大切な樹木に関しては。
根回しを少なくとも半年以上は前に行って。
樹木が移植可能な状態にしてあげる事が。
大事なんじゃないかなー
と、思った訳であります。
そして最後に。
これ、もう絶賛崩壊中なんで・・・
絶賛公開中じゃないよ、崩壊中ですよ・・・
なんかどっかのアポートと似た感じなんですよねぇ・・・
外庭の床が欲しければ、やり直す。
床が要らなければ土留めのみにして。
安全性のあるフェンスだけにする方が。
コスパに関しては、よろしいかと。
ホントは、二段擁壁もアウトなんですけど。
やりようあるから、まぁいいかって感じかなぁ。。
ざっくりと言うならば。
既存不適格な住居を適格にするだけで、図面を作ったり現場を調査したり。
ゴミ代、手間代を手直し代を考えると、ざっと500万以上は掛かるはず。
それぞれを同時にやらず、片方を残して別々で工事をするのと。
ドーンっ!!
バーンっ!!
と。
一気に壊して、一気に建てるのでは。
ざっと1000万円以上はコストが余計に掛かると思います。
500万円+1000万円=1500万円。
大変な、無駄なお金が掛かると言う事になっちゃいます。
住みながらの工事は、なんとか出来るかもしれないけど。
それが実現するだけで、余分に1500万円以上も掛かるなら。
どこかに仮住まいをされて。
約半年間の時間で、一発でやり切っちゃった方のが。
私は良いのかな〜と思った訳であります!
これは私の意見ですので、ご参考までに☆