他人の敷地を規制する|民法234条、本当にそれは正しいか?
「お宅で建ててる現場の家、境界線に近過ぎてるんじゃないか?
以前に立っていた家も、境界線に近過ぎて困っていた。
民法では隣地境界線から50センチを話す規定がある。
迷惑だから、もっと境界線から離して建てなさい。」
現場側から、その報告を受けた私。
あれれ・・・
民法と建築基準法なら、建築基準法の専門性が高いはず。
建築基準法で承認されてるから。。
特に問題の無いはずなのだけど。。
お隣の方は、なんでこんなに自信があるのだろうか・・・
その自信のある言い回しから、うちの現場担当も困惑するくらい。
以前であれば、私がクレーム処理担当と言う事で。
これらの話をまとめるべく、対応をさせて頂いていたのですが。
今はスタッフの成長を奪ってしまうと、考え方が変わりまして。
それぞれの担当者に任せております。
ただし。
今回の様なケースとしては、自分だけの考えで行動しない方が良い。
なぜなら。
法律だって変わる事も、あったりするし。
物事の取り方次第では、結論だって大きく変わる。
そこで土地探しでお付き合いのある、ミスターTにコンタクトを取りまして。
民法のプロである、弁護士さんを紹介してもらう事にしました。
弁護士さん、今まで無縁だから・・・
お知り合いの方が居ないのよね・・・
私の狙いはこういう事。
目の前で起きた事を、どう捉えるかは本人次第。
解釈の仕方次第で、180度結果が変わる場合も多々ある。
どちらが正しく、どちらが悪いと言う事は置いておいて。
今後の工事期間中やお引渡し後の事も考慮して。
しっかりと弁護士さんにアドバイスを貰いなさい。
と言う意味合いがあって、担当スタッフに行ってもらいました。
結果的には民法234条と基準法65条の話になるのですが。
【民法234条】
建物を築造するには、境界線から五十センチメートル以上の距離を保たなければならない。
前項の規定に違反して建築をしようとする者があるときは、隣地の所有者は、その建築を中止させ、又は変更させることができる。
ただし、建築に着手した時から一年を経過し、又はその建物が完成した後は、損害賠償の請求のみをすることができる。
これを見る限り、確かに近隣の方の道理は正しいと言えるでしょう。
そしてこの民法に被せる建築基準法の法律はこちら。
赤枠で囲った部分が、今回の該当する部分。
【建築基準法第65条】
防火地域又は準防火地域内にある建築物で、外壁が耐火構造のものについては、その外壁を隣地境界線に接して設けることができる。
関連民法234条1159上
この家は準防火地域内で、外壁が耐火構造。
これが、私たちが問題無いと捉える根拠になります。
でも、民法も変わったりするのかな。。
私たちの知らない何かがあるのかな。
それを確認するため。
トラブルを回避するため。
そのための弁護士さんへの相談。
約40分ほどの相談にて、弁護士さんからの回答は。
「民法に定められた法律があっても個別に法律がある場合、民法よりもそちらが優先される。
今回のケースは建築基準法に於いて違法性が無いのだから、損害賠償も除却も必要無い。
過去に最高裁でも、同様の判例が出ている。
どうしても近隣の方が納得出来ず、仮処分の申請を行ったとしても。
裁判所はそれに見合う保証金を積まないと、申請自体を却下する。
つまり今回は特に問題では無いと言えます。」
との回答だったそうです。
世の中には、色んな専門家の方がいらっしゃる。
私たちの様に家を設計したり、建てたりするのは建築士や建築施工管理技士。
そして民法と言えば、建築士のジャンルではなく弁護士さん。
今回は工事期間中やお引渡し後のトラブルを防止する意味も含めて、弁護士さんの予約を取りなさい。
と言う事で、話を聞きに行ってもらいました。
モメたくて、モメる人は少ないと思いますが。
この内容を近隣の方には丁寧に説明して。
トラブルを起こすつもりが、こちらには無い。
お引渡し後の事もあるから。。
ご納得頂けたら、何よりですと伝える様に。
その上で、工事中のわだかまりも無い様に。
そんな指示をさせて頂きました。
結論から言えば。
人様の敷地は、人様の敷地。
自分の敷地は、自分の敷地。
そのためのガイドラインが境界線なのです。
人様の敷地を、自分の思い込みだけで規制するのは。
あまり良い事では無い。
と、私は思う出来事でした。
みなさんの家造りを支える裏側では、こんな実例もあったりするんですよねぇ・・・