ハウスメーカーや工務店との契約前に後悔しない基礎知識7選
住宅展示場に出店しているハウスメーカーや工務店の家は、これから家を建てる方にとってはとても参考になると思います。
実際の家を見れるのは、良いも悪いも参考になる事ばかりでしょう。
そしてウェブ版の住宅展示場である、ポータルサイトに登録しているたくさんの工務店。
同時に様々な会社を見れますので、いちいち検索せずとも簡単に見る事が出来ます。
時代はネットの利便性により、いつでもどこでも情報が見れる様になりました。
どこで建てれば、希望の家が建てれるのだろう?
そこで新築やリフォームを専門にしている中尾建築工房から、ハウスメーカーや工務店との契約前に後悔しない基礎知識7選をご紹介させて頂きます。
Contents
1.営業マンの「とりあえず契約を」はあなたの為の契約ではない
「とりあえず契約を」
「細かいところは後から変更出来ますから」
「今契約して頂かないとキャンペーン対象にはならないので」
家は人生で一番大きな買い物となる家にも関わらず、住宅展示場では営業マンからの「とりあえず契約を」と言うおかしな一言があります。
それ以外にも、住宅購入者を慌てさせる様な言葉を使い、契約を促す営業マンも居ます。
でもよく考えてみたら「とりあえず契約を」っておかしな言葉だと思いませんか?
とりあえずで済むのは、居酒屋で生ビールを頼む時だけぐらいの事だと思ってしまいます。
しかも契約する際の資料としては、あまり信ぴょう性の無い資料ばかりです。
- 資金計画書
- 簡単な間取り
- 住宅商品のグレード紹介パンフレット
概ね、これら三点セットで契約を求めて来ます。
数千万円の住宅を建てる契約になるにも関わらず、なぜ住宅展示場ではこの様な契約手順を踏むのでしょうか?
実は出展しているハウスメーカーや工務店の都合による背景がありました。
ここから先は住宅業界の裏側をお見せして行きますので、しっかりと読み込んで頂きたいと思います。
2.まずは住宅展示場のシステムを知ろう
ここではまず、家を建てるあなたが住宅展示場に行くメリットやデメリットではなく。
ハウスメーカーや工務店が、住宅展示場に出展するメリットとデメリットを業界関係者の私からご説明しましょう。
■住宅展示場に出展するメリット
- 週末やイベント日はたくさんの方が来場する
- 実際に建物を見せながら説明出来る
- 豪華に作ってあるので目を引いてもらいやすい
- ディズニーランドの様で住宅検討者は舞い上がりやすい
- 知名度を上げやすい
この様に住宅展示場には、家を建てようとしている検討者ばかりが集まります。
週末などは、たくさんの営業マンを集中的に展示場に配備する事も多い様です。
■住宅展示場に出展するデメリット
- 経費が多大に掛かる
- 平日はほとんど閑古鳥の様な状態
- イベントやプレゼント目当ての方も来場する
どちらかと言えばメリットの方が多い様に思いますが、出展するには大変な経費が掛かります。
収益力の高いハウスメーカーなら良いのでしょうが、中堅ハウスメーカーや工務店にとっては多大なる経費になります。
■住宅展示場に出展する上で発生する経費
- 建築費
- 出展料
- 営業マンや事務員の人権費
- 雑費(保険、ガソリン代、社用車の購入費、維持、通信費、OA機器)
- 光熱費
- チラシやテレビコマシャールの広告費
これらの経費の総額は年間最低でも、1億円〜1億2000万円ほど掛かるそうです。
目立つ場所は出展料も高いですし、2区画や3区画を出していれば経費の金額は誰でも想像出来るかと思います。
これだけ見るとハウスメーカーや工務店の営業マンは、部署の長から「何が何でも契約を取って来い!」と言う指示が出てもおかしくはありません。
契約の取れない営業マンも、永くは勤務も出来ない事でしょう。
その結果が
「とりあえず契約を」
と言う摩訶不思議な契約方法を促す大きな理由です。
ここであなたに覚えておいて頂きたい事は。
基本的に住宅展示場に出展している、ハウスメーカーや工務店の様な企業は家を販売する会社です。
こだわりの家を建てるイメージとは、若干かけ離れていると思った方が良いかもしれません。
3.次にポータルサイトのシステムも知ろう
ウェブ上に住宅会社を集めて紹介するポータルサイトも幾つかあります。
スマホやタブレット、会社のパソコン上で、いつでも見る事が出来ますね。
とても便利に思えるでしょう。
ここでもまず、家を建てるあなたがポータルサイトを見るメリットやデメリットではなく。
ハウスメーカーや工務店が、ポータルサイトに掲載するメリットとデメリットをご説明しましょう
■ポータルサイトに掲載するメリット
- いつでも資料請求がある
- ハウスメーカーや工務店の都合の良い情報だけを載せられる
- より目立つ場所に掲載するなら別途オプションで掲載出来る
- 多数の会社が掲載される事で、ポータルサイトのシナジー効果が高まる
- 知名度を上げやすい
この様にポータイルサイトも、家を建てようとしている検討者ばかりが集まります。
何よりいつでも資料請求の機会がある事は、住宅販売会社にとってはありがたい事でもあるのでしょう。
■ポータルサイトに掲載するデメリット
- 住宅展示場ほどではないが、経費が掛かる
- 施工事例をたくさん出せば出すほど費用も掛かる
- 施主があちこち資料請求出来るシステムなので、囲い込みにくい
住宅展示場の様に、ハウスメーカーや工務店などの住宅販売会社側からすればメリットが多い様に思います。
■ポータルサイトに掲載する経費
- 掲載費
- オプション費
- 撮影費用
これらの経費の総額は、比較的安い枠でも月額70万円〜と聞きます。
年間で考えれば、70万円✖️12ヶ月=840万円は少なくとも掛かるそうです。
目立つ場所は掲載すればオプション費用も高いですし、あっと言う間に1,000万円を超えそうですね。
大きなハウスメーカーなら大した経費ではないのでしょうが、中小の工務店にとってはとてつもない大きな経費になります。
私も立場的には中小の工務店を経営しています。
同じ立場になる訳ですが、そこまで経費を掛けようとは到底思いません。
それだけ経費を掛けるなら、実際に建てる家の素材をグレードアップしたり。
その分、価格を下げる方に回したいくらいです。
いずれにせよ、中小の工務店にとっては大きな経費です。
掲載する広告料金の元を取るべく、やはり家を売る営業マンが登場する事になります。
オンリー1の家を共に作ろうと言う感覚とは、かけ離れている印象を受けてしまいます。
4.○○○カウンターや○○○○の窓口の紹介システムは?
最近の風潮では、おまとめサイト的な○○○カウンターや、○○○○の窓口と言う一括サイトが見受けられます。
私も過去には○○○カウンターに登録して欲しいと、掲載依頼を受けた事があります。
依頼の理由は
「中尾さんなら説明上手だから、契約も早いので!」
「他の工務店さんは説明が下手過ぎて、話がなかなかまとまらないんです。」
褒められるのは嬉しいですが、そこは隠れた何かがあります。
ですから私は、やんわりとお断りをさせて頂きました。
では紹介システムの場合も同じ様に見ていきましょう。
■紹介システムに掲載するメリット
- 希望者がいれば紹介システムから連絡がある
- ハウスメーカーや工務店の都合の良い情報だけを載せられる
- 多数の会社が紹介される事で、紹介会社のシナジー効果が高まる
- 知名度を上げやすい
この様に紹介システムも、家を建てようとしている検討者ばかりが集まります。
カウンターや窓口に訪れた方の要望を聞き、それに見合ったハウスメーカーや工務店などの登録された会社を紹介します。
■紹介システムに掲載するデメリット
- 登録料が掛かる
- 契約すると紹介料金が掛かる
住宅展示場の様に、ハウスメーカーや工務店などの住宅販売会社側からすれば、メリットが多い様に思います。
では経費のほうはどうでしょうか。
■紹介システムに掲載する経費
- 登録費
- 紹介費
- 撮影費
登録料は30万円、そして請負契約に至った場合は○○○カウンターや○○○○の窓口に5〜10%の紹介料が発生します。
仮に2000万円の契約であれば、100万円〜200万円の紹介料金が発生します。
1軒の契約でこれだけ費用が掛かるのですから、ハウスメーカーや工務店側からすれば、自ずと見積もりの価格を上げたくなるかもしれません。
「打ち合わせも契約も、追加や変更も施主様と直接やって頂ける元請けとしてお願いします。」
紹介システムでは、この様なキャッチフレーズで登録を促しています。
一見親切な様ですが、何にもせずに利益はしっかり取りたい傾向があるのは否めません。
また紹介システムの場合は、どの窓口でも知識のある方が居る訳では無い様に思えます。
5.不動産会社からの紹介は?
家を建てる為には、土地から購入する事になります。
不動産会社に物件を仲介して頂くか、売主が不動産会社だった場合はそこから買うか。
いずれかだと思います。
土地を買い終わったあなたは、気分は高揚する事でしょう。
私も土地を買った経験はありますので、気持ちは良く分かります。
そこで親切丁寧に「家を建てる工務店さんは決まっていますか?」と確認してくれる不動産営業マンの方も居ます。
なぜ土地を契約した後も、親切に気遣ってくれるのでしょうか?
実は地域に根ざす工務店でも、不動産会社に営業して廻る工務店も居ます。
■不動産会社に紹介してもらうメリット
- 顧客は不動産会社から紹介してもらえる
- 今すぐ家を建てる方を紹介してもらえる
この様に不動産会社には、土地を購入して家を建てようとしている方が集まります。
ウェブが発達する前からあるシステムですが、ハウスメーカーや工務店からすれば一番手っ取り早いのかもしれません。
■不動産会社に紹介してもらうデメリット
- とにかく契約しろとプレッシャーが掛かる
- 紹介してもらった不動産会社に紹介料を支払う
- 紹介料を払うので自社商品で提案したくても出来ない
やはりここでも紹介料と言うコストが発生していますね。
あまり健全であるとは思えません。
■不動産会社に紹介してもらう際の経費
- 紹介料
- 接待費
これらの紹介料の総額は、会社によってバラバラです。
私の知人でローコスト住宅のフランチャイズに加盟していた工務店さんが居ました。
すでに倒産してしまっているので、今はどこに居るかは分かりません。
その方曰く、一軒の紹介料金は70万円との事でした。
実は私も大工として独立をして来た経緯があります。
大工の棟梁から元請けの会社になるまで、この業界の仕組みを知るまでの体験があります。
ここでは実際にあった、私の知っている紹介料の例をあげてみましょう。
- 大きめの2×4輸入住宅を施工会社に原価で施工させ、浮かせた費用は1,000万円
- 30坪程度の家を建てて、坪当たりの紹介料は坪8万円(240万円)
- 1軒の紹介に付き、300万円
⬛️大きめの輸入住宅のケースは不動産会社の社長だけが丸儲けです。
そして施工会社は倒産に陥ってしまいました。
⬛️つぼ8なんて書き方をすれば、居酒屋を想像される方も居るのではないでしょうか?
笑えませんが坪8万円ですから、大きな家を建てれば建てるほど紹介料は上がります。
⬛️300万円のケースは、わたしが不動産会社を直接知らない場合でした。
「当社のお客様が御社でお願いしたいと言う事なので、ご紹介させて下さい」
もちろん丁重にお断りをさせて頂いたのですが、ムキになった不動産営業マンさんは。
「当社のお客様の場合は、必ずどんな施工会社でも300万円を頂く様にしています!」
もう聞くだけ時間の無駄なので、お電話を切らせて戴きました。
この様に歪んだ方針を持っている不動産会社も居ます。
親切に紹介してくれる裏側には、この様なカラクリがあります。
そして自社の得意な家とは別に、ローコスト版の様なリーズナブルに建てる家を用意している会社もあります。
なぜ自社の得意な家ではなく、ローコスト版が存在するのでしょうか?
■工務店が自社の得意な家とは別に、ローコスト版の商品を持つ本当の理由
- ローコスト版を持つ事で安い価格の家を建て、多額の紹介料を不動産会社に支払う
自社の住宅商品がそれなりの価格の場合、紹介料が加わると、とてつもなく高い見積書の金額になります。
それでは契約まで達する事が出来ないので、ローコスト版を持ちます。
これなら紹介料を不動産会社に廻せる事になります。
ですが施主にとって大切な資金を、家に掛けれない理不尽さは残ってしまいます。
これは実際に起きている業界の裏側のお話です。
特に顕著なのは、比較的人気のあるエリアで活発にこの様な事が行わてれています。
人気のあるエリアは次々とお客様が来ますので、右から左にお客さんを回す事で多額の収益を生み続けています。
また他県から人気のあるエリアに来る方も多いので、あまり地元の評判を知らずに契約まで進んでしまいます。
中には堅実にお客様の為に働く仲介の方も居ます。
デベロッパーとして、少しでも良い物件を開発する為に頑張ってる不動産会社もあります。
でも必要以上の親切心には、やはりお金が絡んでいるケースが多々ある事を覚えておいてください。
6.契約時の価格は入り口価格 あなたが支払う価格が出口価格
様々な施主と施工業者との出会いの場があり、様々な経費やマージンがある事がお分かりになったかと思います。
何よりここが一番重要なポイントですんで、しっかりと覚えて頂きたいと思います。
■住宅展示場では、たくさんの会社の中から選んで頂く必要があります。
■ポータルサイトも、たくさんの会社の中から選んで頂く必要があります。
■おまとめサイト的な○○○カウンターや、○○○○の窓口でも数組の中から選んで頂く必要があります。
■不動産会社から紹介してもらう場合も、数組の中から選んで頂く必要があります。
多額の経費が掛かるから
多額の紹介料が掛かるから
いずれも契約しない事には、各社とも経費倒れになってしまいます。
その為にまずは安い金額を提示して、後から詳細の打ち合わせを行う契約形態にするのです。
それでは入り口価格と出口価格を詳しく見てみましょう。
■入り口価格とは?
とりあえず標準仕様で契約して頂いて、後から詳細を詰めて行く別途オプション形式とも言えるでしょう。
あなたが契約のサインした時に見ている価格です。
あなたはラッパをトンネルに例えると、ラッパの口元に立っていると想像してください。
この後、詳細な打ち合わせを進めて行くので、何かとオプションが発生して行きます。
施主側としては後から金額が吊り上るので、叶えたい要望も言いにくくなってしまいます。
■出口価格とは?
すべて打ち合わせが決まって、オプションも決まった状態です。
現場の進行中に出てしまった追加金額も含めて、あなたが実際に支払う事になる価格の事を言います。
この時、あなたはラッパの一番大きい朝顔の部分に居る状態です。
想定していなかった費用があるのを悔やみ、支払いをするしか無い状態です。
ここで振り返ってみましょう。
住宅業界が何故、とりあえず契約を進めてくるのか理由が分かったかと思います。
正直言って、こういった事を書けばポータルサイトや紹介システム、不動産会社から文句があってもおかしくありません。
でも私はポータルサイトや紹介システム、不動産会社との付き合いがなくても。
これまでに、たくさんのOBオーナー様の家づくりに携わらせて頂きました。
本来の家づくりは、住宅を販売する事ではありません。
良い家を建てる為には、いかに設計がクライアントの声をヒアリングしてそれを形にする。
施工管理者が無駄な経費が出ないか、しっかりとチェックし。
職人さんの手が止まらない様、円滑に現場を進める事で。
少しでも限られた予算で、あなたらしい家を建てる為に注力する事です。
ですから契約は先にしないで、しっかりと打ち合わせをしてから契約する事をお勧めいたします。
私としてはこれが広まる事で、少しでも住宅業界が変わって行くきっかけになれば良いなと思います。
7.まとめ
いかがでしたか?
ハウスメーカーや工務店と契約する前に、一般の方が知らないであろう内容をまとめさせて頂きました。
住宅展示場に出展するハウスメーカーを選ぶなら、ブランディングされたハウスメーカーの住宅商品を購入する事で満足される方も多いと思います。
そういった方は、それで満足だから良いのです。
スマホやタブレットでいっぱい検索して、ポータルサイトや紹介システムを見つけるのも良いでしょう。
ですがあなたが手にするのは、スマホ画面の向こうにある情報ではなく、実際にある土地と家です。
家と土地は人生で一番高い買い物になりますので、必ずしもスマホで買わなくとも良いかと思うのです。
ひとまずスマホを置いてみて、リアルなお友だちや知人、親御さんの声を聞いてみるのも良いかもしれませんね。
もしもあなたの廻りにそう言った方が居ないのなら、中尾建築工房をたたき台として利用して頂いても構いません。
しっかりと住宅業界の裏側知って、あなたらしい家づくりが出来る様、楽しい家づくりを行う糧にして頂ければ幸いです。