セルフビルド・ハーフビルドの家造り|果たしてコストダウンは図れるか?
今から遡る事10数年前。
中尾建築工房では、壁塗りや塗装などの比較的簡単な工事を。
施主自ら行うセルフビルドで、やりたい方にはやって頂いておりました。
10年以上前のブログから画像を引っ張り出したので・・
画素数少ないのはご勘弁。
まさにガラゲーの時代ですねぇ。。
そして今でも、やるとするならば。
内装のタイル貼りだったり。
内装の珪藻土塗りだったり。
塗装だったり。
外構のウッドデッキだったり。
その程度で抑えてもらっています。
あとは、なるべくプロに任せて頂く形なんですね。
中には、ごく稀に。
一通りやりたい!
そうおっしゃる方もいらっしゃいます。
これが仮に大工の棟梁を経験してる方なら。
特に問題ないとは思うのですが。
普通にサラリーマンとして働いた経験しか無い方が、セルフビルドを希望されるとですね。
いろいろと、覚える事から入らないとならないので。
とにかく、教える作業が出て来てしまうんですよね。
さらに、こちらで丁寧に説明しても。
まず、理解が出来ない場合が多々あるからなのです。
と言う事で、まず簡単なセルフビルドならやって頂いても良いのでしょうが。
完全セルフビルドや。
はたまた雨係りはプロ、内装等を施主が行うハーフビルド。
これらについては、依頼があってもあんまり乗り気にならないんですね。
理由としては、こんな感じ。
- 使う道具の問題
- 工程管理が不明確になる
- 現場で事故が起きた場合のトラブル防止
- 住宅ローンの問題
- 実質的にコストダウンになる気がしない。
ではまず、それぞれの項目についての説明をさせて頂きたいと思います。
・使う道具の問題
まず、施主がプロの様なクオリティを発揮する為には、しっかりと作業が出来る道具が大事。
私は元々、ガチの大工の棟梁でしたから。
そりゃー道具には、徹底的にこだわっておりました。
ある意味、いくら良い腕を持っていても。
道具や刃物が切れないのでは、いくら腕が良くともクオリティは下がります。
良い腕と、良い道具。
これらが揃った上で、品質が保たれると言う概念があります。
これらの道具、用意をする為には。
かなりの費用がかかります。
大工カンタンスタートキット 29,800円(税込)
なんてモノが、リースであるなら良いのでしょうが。
そんなん実際にはございません(笑)
事実、大工さんの車には、ざっと見積もっても100万円程度の道具が積まれてます。
それを用意すれば、あとは努力次第で品質は上がるけど。。
そもそもそこにお金を掛けたら、セルフビルドをする意味が無い。
と言う事で、まずは道具の問題がございます。
・工程管理が不明確になる
明確な工程が、予測出来なくなってしまうリスクがあります。。
例えば来週一週間のスケジュ−ルが決まっていたとしましょう。
それまでには、しっかりと終わらせる。
後に控えている職人さんに迷惑をかけない。
そんな観点から、工程表なるモノを作っているのですが。。
工事が始まる前に、工程表などを引き出します。
これ、うちのは結構細かい詳細工程表です。
チャートの工程表に比べて、この日はフローリングを貼り、養生まで行う。
次の日は壁下地の打ち付け、その次の日は石膏ボード貼りなどなど。
これらを大工さんの人数で計算して、工程表を作っております。
これが施主が作業をするとなると。。
まぁ、予定通りには進む事が無いでしょう。
ともすれば、大工工事完了後にプロの職人が入る必要のある場合。
当然ながら、工程を予定してスケジュールを入れるのですが。
終わってないので、スケジュールをずらす必要が出てしまいます。
これではいつ終わるか分からないので。。
というか、終わった時点で連絡を取ると。
んじゃ、すぐには行けないけど、一週間以内には行く。
そんな感じになってしまうので、工程の管理がしづらい。
と言う工程管理の問題。
・現場で事故が起きた場合のトラブル防止
これが一番怖い事なのですが、施主が作業をしていて。
施主が怪我でもしたら、それはそれはもう大変。
保険をやりくりするだけなら、まだしも。
怪我が完全回復すれば儲け物。
私は現役大工だった頃、現場で転落して首の骨を折って死にかけた過去があります。
今ではなんともないと言いつつも、やはり何かしらの違和感は残ります。
一度壊した身体は、早々には復活しません。
それだけに、体の大切さも知っているし。
怪我した時の怖さもよく分かる。
ペンキ塗りや壁塗り程度なら、そんな大怪我の心配はないでしょう。
でも大工工事の様に、大きな角材を振り回したり。
大工は足場の無いところでも、足場板一丁で天井や壁の石膏ボードや板張りを行います。
これを施主が出来るか・・・と言えば、まぁぶっちゃけ出来ない。
と思います。
ま、出来たとしても仕上がった天井は。
曲がって貼り上がってしまう可能性大でしょうね。
一番私が懸念をしている、現場で事故が起きた場合のトラブル防止と言う理由があります。
・住宅ローンの問題
住宅ローンを一本化して申し込みする方が多いのですが。
住宅ローンは土地を購入して、そこから業者を選定してプランに入ります。
すぐに業者が見つかっていれば良いのですが。。
または打ち合わせがスムーズであれば良いのですが。
施主施工とは言え、スムーズに完了してくれれば良いのですが。
大抵の場合、土地の決済から9〜11ヶ月程度で家を完成させる必要があります。
これ請負契約の内容にもよるのですが、通常は30坪程度で仕事量の少ない家なら。
基礎着工から、引渡しまでの期間を4ヶ月ほど取ります。
もちろん、プロの大工が作業をしてでの期間です。
でも、セルフビルドの量にもよりますけど、その期間内で果たして終わるのか?
そんな懸念も残ります。
期日を過ぎても終わらない場合、期日内に決済が出来ません。
すると、住宅ローンの再申し込みが必要になります。
これ、もしも所得が大幅に下がった。。とか。
会社が倒産したー!。。とか。
そんな事が期間内に発生してれば。
下手すると、再申し込みしても、住宅ローンの実行を却下される可能性も大になります。
つまり、セルフビルドを希望されるなら、最初からローンは一本化せずに。
土地と建物、分けての申し込みをしておいた方が。
比較的トラブル防止にはつながりますが。。
下手すると、それでも期日に間に合わない場合もありますので。
そんなリスクを最初から背負う必要があるのか・・・
と言う懸念は残ってしまいますね。
と言う、住宅ローンの問題もあります。
・実質的にコストダウンになる気がしない
私が施主施工をやりたいと言われた場合、必ず説明している言葉があります。
それは。
「年収(所得)が600万円を超えてる方は、プロに任せた方が良いですよ?!」
と言う事。
これ、職人さんの実際の賃金が600万円程度になります。
しかも相当腕の立つ棟梁でもこの程度の賃金です。
職人は1日休めば、その分は当然お給料が出ません。
ボーナスも無いですし、退職金もございません。
さらに怪我と弁当は自分持ち。
なんて言葉も、昔から残っております。
※怪我に関しては、労災が出る程度です。
道具だって、自前でしっかりと揃っております。
図面を書いて、工程表を示して。
収まりを伝えれば、ほぼ何の問題もなく現場が進んで行きます。
そこに年収600万円の方が、施主施工をやろうとしましょう。
はっきり言いましょう。
あなたが仕事で稼いで来た方が、効率は絶対的に良いです!
考えてもみてください。
年収600万円〜の所得がある方は、なおさらです。
職人以上の所得があるのに、目の前の資金や一般論でね。
型にはめた予算を何とかするために。
セルフビルドを計画されるのでしょうが。
家を建ててる間の、賃貸住居の費用は毎月出て行ってはしませんか?
慣れない作業で、心的ストレスが増えるだけではありませんか?
実際に施工が始まってから、あれやこれやと現金での出費が出てしまって。
こんなはずじゃなかったのに・・・
とは、ならないでしょうか?
私は現場上がりの人間だから、現場の事は隅から隅まで知っている。
当然だけど、品質管理、工程管理も自信がある。
職業柄当然、住宅ローンの事にも詳しいから。
セルフビルドやハーフビルドが、本当にコストダウンに繋がっているのか?
この様に、様々な問題があると思います。
本当にコストダウンになるのか?!
と言われれば、大したコストダウンにはならないと思ってる。
中尾建築工房では、簡単(でも無いか)な珪藻土塗りや、塗装、タイル貼り、デッキ造作。
これらならあんまり、上記に述べたリスクは無いから。
まぁ、安心して作業にも当たれるだろうけど。
そしてこれらなら、住んでからでもやろうと思えば出来る訳で。
上記に述べたリスクは、すべて避けられる事になる。
ガチのセルフビルドは、相当大変&そんなに思うほど得はしないと思いますよー
とだけは言っておきましょう。
セルフビルドをするなら、ただ単純に。
好きだからやる!
家族と思い出をシェアするためにやる!
それなら良いと、個人的には思いますよね!
と言う事で、セルフビルド・ハーフビルドの家造り|果たしてコストダウンは図れるか?
そんなに世の中、楽なモノではございませんですよ。
って事になりまーす。