横浜市金沢区|日本家屋の庇造作Part3
と言う事で前回の続き。
垂木掛けは前回で作業が終わったので、次には下小屋で刻み作業の出来なかった丸太を加工します。
丸太は角材の部材と違って、基準となるラインを引くのがなかなか大変だったりします。
今時の角材は、ほぼまっすぐな材料が多いですし、ねじれやそりも少ないので、墨付け作業は非常に楽チンなんです。
でも丸太の場合、ちょっと高度なテクニックが必要となるんですね。
ではその丸太の作業を公開してみましょう。
丸太に垂木を乗せる場合は、こんな感じで乗せる形となります。
丸太は木としての皮を剥いだモノをそのまま使いますから、基準となる線はそう簡単には出ないんです。
木って、根っこの部分は太くて、上になればなるほど細く育つ訳です。
さらに曲がっていたりもしますし、一部だけへこんでいる部分もありますからね。
それだけに画像に書き込んだ様に、彫り込みの浅い部分があったり、深い部分があったりします。
もし、これをそのまま丸太にドンと垂木を乗せて屋根にしてしまった場合は、丸太なりにねじれた屋根が出来てしまいます。
そんな事をしたら、屋根として収まらないので、ここはきちんと線と点を理解して造って行きます。
こういった部分で大工さんの技術で水平、垂直を出しつつ、更に墨壷で線を打つのではなくて、水糸を張って基準となる線の追い出しを行います。
ここは長年の技術と経験が活きてくる作業になりますね。
溝を彫り込みする時には、手のこで縦の部分を切り込み、その後の部分を鑿で少しずつ崩して行きます。
ほぼ崩し終わったら、彫り込んだ部分と垂木が密着する様に、鑿で軽くさらいます。
ちなみに今回の作業で、私の秘蔵にしていた組鑿を出してしまいました。。
現役の時に使っていた鑿は作業場のどこにあるか分かりませんし、大工さんが現場で使ってそのまんまだったりするので、すぐに使える状態ではありません。
そのため新しい鑿を何本か買おうかと思ったのですが、実は自宅に秘蔵の組鑿がありました!
これ、独立したばかりの時に、自分へのご褒美に購入した鑿です。
横浜にある金物屋さんにものすごい勧められた物でして、私個人も鑿や鉋は越後の三條のモノを良しとしています。
この作者である田斎は親子で刃物を造っている越後の名工でして、非常に良い道具の一つですね。
『いつか使う時があるかも。。』
そんな想いからなのか、全ての鑿はきちんと刃を研いでしまってありました。
なので今回作業はとても気持ち良く鑿切れの良い作業が出来たと言う訳です。
それだけに仕上がりもばっちり!
そして丸太の欠き込みがきちんと終わると、今度は垂木掛けと丸太に垂木をはめ込んで行きます。
ここはちょっと緊張する所ですかね。
垂木をきちんと収めた事を確認すると、今度はビスで固定します。
使っているビスはステンレスのビスになります。
普通の細ビスなどを使った場合、外部ですので雨などが降れば錆を呼び込みます。
錆が白木に付いてしまうと、落とすだけでも厄介•••
なのでこうした部分は必ずステンレスビスを使う事が間違い有りません。
こうした造作の木材は素生は良いだけ、いきなり割れたりする事もあったりします。
それを防ぐ為にも、錐で下穴をあけつつ、ビスも木の表面よりも埋まる様に皿もみも行います。
この道具は、その作業が一本の錐で出来るので、大変便利なアイテムでした!
こうして全ての垂木を固定しまして、今度は垂木の上に載せる広小舞(ひろごまい)を取り付ける段取りを行います。
広小舞は普通の家でもある部材ですが、今回の様な日本きりよけで使う場合は厚みなどのサイズが分厚くなったりします。
まー、軒の出も普通の屋根に比べて、比較的長く出しますし、広小舞にも強度が必要と言う事と、見た目の豪華な感じも必要と言う部分から分厚い材料になっています。
見た目で分かりますかね?
広小舞の一部に化粧板を貼る為に必要な溝を掘っています。
この彫り込みが終わると広小舞を取り付けて、化粧板を貼る作業に移ります。
こうやってみると、どんな構成になっているのか分かりますでしょうか?
広小舞を取り付けた後に、細い角材の木小舞を取り付けています。
さっき溝を掘っていた部分は木小舞と桧の化粧野地板の厚みを測って、正確に彫り込みをしています。
なので板を張り終わると、フラットに仕上がります。
化粧板を全て張り終わり、下から見るとこんな感じの画になります。
下から見る分には、ほぼ完成形に見える日本きりよけ。
この後は淀、広小舞、野垂木、野地板で作業が完了となるのですが、それはまた後日に!
ちょっと細かく説明を入れているのは、いつか若い大工さんが勉強の為に検索した際に、これを見て参考になったら。。。と言う想いから、コツとなる部分の説明を入れています。
オーナーの皆様、そんな部分をご理解頂けると幸いです!
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