自然な素材で家を建てる工務店選び〜依頼先についてのメリットデメリットをお話しします
自然素材の家は、ここ10数年ほどで大変人気が出だし始めました。
自然素材の家が流行っているという事を耳にして、様々な会社が自然素材の家を扱い出す起因になるほどです。
神奈川県内だけでも、大きい工務店から小さい工務店まで、ここ10数年でかなりの数になったと思われます。
中尾建築工房は社長が元大工。
創業から、あまり自然素材と言うジャンルを意識した事はありませんでした。
湘南や三浦半島の古い家々を見て来て「こうすると家が駄目になる」と言う事を現場で見続けて反映をしています。
今回は依頼先を検討中の方に、元大工としてお勧めできる、自然素材の家の依頼先選びについてのメリットデメリットをお話ししたいと思います。
Contents
1.自然素材で建てる注文住宅が神奈川県でブームになった理由の一つ
某雑誌媒体で、神奈川県内の小さな工務店が大きく掲載される事がありました。
その工務店は少数のスタッフで、年間16〜20棟の自然素材の注文住宅を建てていました。
雑誌媒体には営業マンが居り、神奈川県内の住宅会社に対して「○○○の工務店が自然素材の家を造って人気があります!御社も同じ様な家を建てて、○○○○○(アルファベット5文字)に掲載しませんか?」
こういった切り口で、一斉に雑誌に掲載を促す営業攻勢をしました。
どの住宅会社にも乱発した営業攻勢だったので、一時は私の会社のある横須賀市内だけでも、16社ほどの住宅会社が雑誌に自然素材の家を掲載し始めました。
自然素材の家とは別にして、住宅を建てる会社は様々な住宅会社が存在します。
■住宅会社の種類
- 建売分譲住宅販売専門の会社
- 建売住宅下請け専門の会社
- 地域に根ざした新築やリフォームを行う工務店
- リフォーム専門の工務店
- 中小ゼネコン建設業社
■これらの業種に必要な許可
- 宅地建物取引業
- 建設業
- 建築士事務所登録
住宅を販売するなら宅地建物取引業が必要になります。
住宅は販売せず、設計もせず、建てるだけなら建設業のみ。
住宅を設計するなら、建築士事務所登録が必要になります。
これを見る限り、分譲住宅の取り扱いをする業者は宅地建物取り引業が必要です。
宅地建物取引業者は不動産業者になります。
雑誌媒体の○○○○○は、建設業を持っている企業に営業攻勢を掛けました。
様々なジャンルの違う会社が一斉に自然素材の家や、自分らしいなどのコピーライティングを似せて掲載し始めたのです。
住宅を建てるのは建設業の許可があれば、どこでも建てる事は可能です。
ですが建設業の許可があれば、自然素材の家を建てるノウハウがある訳ではありません。
クレームの無い自然素材の家を造る為には、気をつけなければならないポイントがたくさんあります。
住宅会社には、それぞれ得意な分野があります。
悪い言い方をすれば、ごちゃ混ぜの乱立した状態になったと言えるでしょう。
そのごちゃごちゃを整理するため、様々な自然素材の家がある事を見て行きましょう。
2.建売住宅業者が建てる自然素材の家
建売住宅を見て、あなたはこの家を買いたいと思いますでしょうか。
建売住宅は、基本的にどの家にも差と言うモノがありません。
もちろん個性も必要ありません。
外観の形状はほとんど同じ、強いて言えば外壁のサイディングの色が少しだけ違う程度です。
建売住宅の設計は基本的に外注です。
現場の監督は、一人で年間50〜60棟は抱える事になります。
なぜこの様な形になるのかと言えば、販売出来る価格に理由があります。
■建売住宅の原則
- 売れる価格帯に設定する
- 無駄な事は一切しない
- ちょこまかとデザインを変えない
- 取り敢えず30坪以下で4LDKの間取りを入れる
- 人気があっても高い設備は導入しない
- 売地があっても、プラン入れして採算合わずならやらない
- 売れ残らない為に価格を下げれる様にする
この様な原則があります。
便利なモノほどニーズがあれば、採用するのも一つの選択肢だと思うのですが。
建売住宅ではその様な傾向は無く、とにかく売り切る事に焦点を当てています。
この様な会社であっても、自然素材や注文住宅を扱っている会社があります。
一体なぜ餅屋でもない、自然素材の家や注文住宅を建てようとするのでしょうか。
■建売業者には、ざっと2つのパターンがあります。
- 建売業者には、自社で敷地を一括購入して建てる会社もあります。
- その半面で敷地は一切購入せずに、建物だけ発注してもらう会社もあります。
敷地から仕入れて購入する建売業者なら、自然素材の家を建てる事は無いでしょう。
家の素材がまったく違いますから、思っている原価にはなりません。
クレームも面倒なので、それなら次々に敷地を仕入れて普通の分譲を行うでしょう。
敷地を購入しない建売業者は、建物だけ発注してもらい、とにかく建て続けるだけです。
後者の建売業者は、敷地を仕入れて分割するノウハウもありません。
旨味を求めて、流行りの家に手を出してもおかしく無いでしょう。
この様に下請けの建売業者が、旨味を求めて流行りの家に手を出す事があります。
ではこれらの業者が家を建てる場合、どの様な家になるのでしょうか。
建売住宅をベースに、内装を自然素材に変えるだけ
この程度です。
徹底的に安いコストの材料を選ぶ習性がありますから、内装材もとにかく安い自然素材を採用します。
家にこだわりが無ければ、この様な家でも良いのでしょう。
それなりにこだわりたい方の場合は、あまりオススメできるモノではありません。
ここで気をつけたいのは、高いお金を支払ったにも関わらず、建売レベルの自然素材の家を手にしてしまう事です。
どうゆう事かをご説明していきますね。
■高いお金を支払ったにも関わらず、建売レベルの自然素材の家を手にしてしまう依頼先の例
- 住宅展示場に出店している工務店
- 年間棟数を売りにしている工務店
- ありとあらゆる広告媒体に掲載する工務店
- テレビやラジオのコマーシャルに力を入れている工務店
- 店舗が目立つ場所に出店している工務店
この中で2つ以上が当てはまる依頼先には、かなり注意が必要です。
しっかりとした自然素材の家を建てるには、かなりの原価が掛かります。
これらの広告宣伝費を捻出する為には、多額の利益が必要になります。
あなたが支払うお金は、あなたの家に掛かった経費ではなく、工務店の宣伝広告費にほとんど使われてしまっています。
建売業者は設計も外注ですし、職人さんの手間賃も安いです。
難易度の高い技術レベルを持ち合わせている職人さんは、建売業者には居ません。
流行りにも乗ったりしますし、廃りにも乗ったりします。
建売も建てていて、派手な宣伝をする依頼先は注意が必要です。
価格が安ければまだマシですが、それなりの価格で安い家を手に入れてしまった場合。
あなたは後悔しても、後悔しきれない事になるでしょう。
3.フランチャイズに加盟して建てる自然素材の家
フランチャイズと言えば、皆さんどの様な業種を想像されるでしょうか?
私の場合は、コンビニだったり、ファーストフード、ラーメン店などを想像します。
フランチャイズ(FC)は本部と加盟店(フランチャイジー)が、パートナーとして活動をする関係です。
- 主な宣伝広告や宣伝資料はFC本部
- 実際に建てるのは現場近くの加盟店
それぞれ役割分担があります。
■フランチャイズに多い家
- キューブ型の家
- 南欧風の家
- 構造現し仕上げの家
- 輸入住宅風の家
- ペットを長寿させる家
- 本体価格◯◯◯◯万円(税抜き)の家
全国的に人気を得たブランディングがありますから、あなたも一度は見かけた事はあるかと思います。
この他にも様々なフランチャイズが、住宅業界の中には存在しています。
FC本部が持つハウスメーカー並のブランドイメージ、そして宣伝された知名度。
知名度が無い工務店にとっては、喉から手が出るほど欲しいモノでしょう。
では工務店にとって、FCに加盟するメリットはどの様なモノがあるでしょうか?
■工務店がFCに加盟するメリット
- すぐにお客様が現れる
- パンフレット等の資料が用意されている
- 本部から資材が買えるので自分で探す必要が無い
- 分からない事はなんでも教えてくれる
- 加盟店同士の情報共有が出来る
自分でなにかを開発する労力は必要ありません。
加盟すれば、今すぐ流行りの家を元請として販売する事が出来る事になります。
自然素材の家をフランチャイズ化している会社は、今ではたくさん存在します。
ではフランチャイズにデメリットは無いのでしょうか。
実は私が下請け大工の若い衆(大工の修行時代)に、元請の建設会社がフランチャイズに加盟をしていました。
だいたい3年もすれば、そのフランチャイズからは退会して、次のフランチャイズに変わって行きました。
毎回、工法も変わりますし、マニュアルも変わります。
もちろん単価も変わりますので、下請けの大工としては大変でした。
この様な経験をして来た経緯があります。
何故、フランチャイズを退会するのでしょうか?
■工務店がFCに加盟するデメリット
- 加盟金が発生する
- ロイヤリティが発生する
- 設計原則があり柔軟に対応できない
- モデルハウスを建てる必要がある
- ブランドのイメージを壊す真似は出来ない
- 採算が合わない
自分でなにもしない代わりに、多くの経費が出てしまう様です。
販売能力の低い工務店は、結果的に採算が合わずに退会する事になります。
長年フランチャイズに加盟をし続けるので無く、数年続けると退会する会社を良く見かけます。
- 加盟すると新商品発表会の時は派手な宣伝をします。
- FCを抜けると何もなかった様に、ホームページ上から商品情報が消えて無くなります。
こうなってしまうとそれを気に入って、家を建てた方にとってはデメリットも出てしまいます。
本部しか販売してないメンテナンス材料もある様です。
本部や加盟店のいざこざは置いていて、あなたがフランチャイズの家を買うメリット・デメリットを見て行きましょう。
■あなたがFCの家を買うメリット
- 分かりやすい資料がある
- FCの本部が大きいから安心出来る
- 価格も明確なので購買意欲が湧く
- 本部の一括仕入れで、良いモノを安く買える
- 地域の工務店が建てるので、アフターを期待出来る
ネット広告などで気になった、格好の良い家が地域の工務店で建てられる。
アフターも地域の工務店ですから、なにかあったら来てくれる。
こんなイメージを持たれると思います。
次にあなたがフランチャイズの家を買う、デメリットを見て行きましょう。
■あなたがFCの家を買うデメリット
- 実際にカタログ記載の価格では建たない
- 写真の様な家を建てるにはオプションを選択する必要がある
- 加盟店ごとに完成した住宅にムラが起こる
- 工務店がFC退会した場合はメンテナンスに影響が出てしまう
- なにかあっても本部はアフターをしてくれない
FCはある意味、住宅建材商社とも言える存在です。
工務店へノウハウを教えるだけではなく、部材を販売する事で利益を上げます。
もしも工務店が退会してしまった場合、止めるのはそれなりの理由がありますので本部の材料は使えないでしょう。
仮に珪藻土でクラックが出てしまった場合、他の珪藻土での補修、またはコーキングでの補修になってしまうかもしれません。
いかがでしょうか。
FCの家を建てる場合は、それなりのリスクもある様です。
私の会社にも、入社前にFCの家を建てたスタッフが居ます。
当時の本部は工務店機能も持ち合わせていたそうですが、今では工務店として機能はしてないそうです。
何故なら部材を販売する方が、利益が上がるからなのだそうです。
工務店を経営している私の立場から見ると、無責任と感じるのはおかしいでしょうか。
4.経営コンサルタントのノウハウを導入した自然素材の家
工務店にダイレクトメールやダイレクトFAXを送ってくる、建設系経営コンサルタントが居ます。
コンサルタントは経営に関わる相談をするだけではなく、住宅商品の販売ノウハウを工務店に販売しています。
フランチャイズと比べて、経営コンサルタントの存在は表には出てきません。
どの様な事で経営コンサルタントが入っている家と分かるでしょうか。
■経営コンサルタントが提案する例
- 工務店とcafeを繋げているケース
- 工務店と雑貨店を繋げているケース
- 工務店とパン屋を繋げているケース
- 工務店とショッピングモールを繋げているケース
この他にも経営コンサルタントが提案している事はありますが、ここ数年の傾向ではこの様な提案が多い様に思います。
普段使いをするお店と工務店のショールームを繋げる事で、気軽に入ってもらうと言う手法が多い様です。
特に印象的には悪い感じには見えません。
では工務店が経営コンサルタントを頼る理由はなんでしょうか。
■工務店が経営コンサルタントを頼る理由
- ハウスメーカーの下請けを辞めたい
- 工務店の下請けから元請になりたい
- 公共工事から民間の住宅にシフトしたい
- リフォーム会社から新築の家を建てる元請になりたい
- 独立してやりたいけど集客方法が分からない
この様な方たちが経営コンサルタントを頼って、提供された住宅商品を購入している様です。
ただし共通しているのは、会社の規模を大きくしたい方が多い様に思います。
ではあなたが経営コンサルタントの入っている会社で家を建てる場合、どの様なメリットがあるでしょうか。
■メリット
- 知らない間に入ってるから気づかない
- 全国の成功事例を真似しているので分かりやすい
■デメリット
- コンサルタントに支払うコストが余分に掛かる
- 自由設計な様で自由ではない
フランチャイズに比べて、あまり悪い印象はありません。
ただし成長企業的な部分は多々ありますので、お客様目線に立てるかどうかがポイントになる様に思えます。
この様に住宅業界の中には、様々な自然素材の家を皆さんの知らない世界でノウハウが販売されています。
この記事を書いてる私は、趣味が休日の沖釣りです。
私はカフェやパン屋は出来ませんが、海鮮丼を販売する工務店にならなれそうです(笑)
5.大工が建てる自然素材の家
大工が建てる自然素材の家はどうでしょうか。
もともと地場で働く大工は、無垢材にこだわりがあります。
立派な木の家を建てるなら、大工に相談した方が一番手っ取り早いです。
すぐに使える無垢材もあれば、しばらく置かないと使えない無垢材もあります。
アク抜きしないと木目がキレイに出ない無垢材もあります。
本当に無垢材にこだわるのであれば、大工の建てる自然素材の家が良いでしょう。
なにより大工は実際に木材を肌で触り、その特性を知り尽くしています。
ですがどんな依頼先にも、メリットやデメリットは存在します。
大工の建てる自然素材の家を頼む場合の、メリット・デメリットを見ていきましょう。
■大工が建てる自然素材のメリット
- 本物の無垢材を使ってもらえる
- 木材の知識はすごいので色々と教えてもらえる
- ちょっとした事でも現場で臨機応変に対応できる
- メンテナンスの事も気軽に相談に乗ってもらえる
- 地域で活動しているので下手な事は一切しない
ただしあまり話の上手な大工は、世の中にあまり居ない様な気がします。
私も元大工ではあるものの、私の場合は珍しいケースだとおもいます。
次にデメリットを見ていきましょう。
■大工が建てる自然素材のデメリット
- 木材の方にコストが廻りやすく設備はあまり興味をもってもらえない
- 外部にも露出する木材を使うのでメンテナンスが掛かる
- お寺の様な木の家になりがち
- 銘木を扱う事が多いのでコストが高めになる
- 工場のプレカットは使わず、墨付け刻みから始める
- 工事期間が長い
- 接客は学んでないので、説明下手かもしれない
和な家が好きな方にとっては、最高に贅沢な無垢の木の家を建ててくれるでしょう。
その反面で子育て世代の方が、援助も無い状態で買える価格ではありません。
地場で何代も続いた町工務店の大工は、この様なケースが多い様です。
私も元大工ですから、宮大工の造る様な仕事の依頼があると楽しくなります。
下手すると自分で現場に行って、自ら造ってしまう衝動に駆られる事もあります。
でも元大工の全てがこうかと言えばそうではないです。
大工とはいえ、無垢材に対しての知識が無ければ、適材適所の使い分けをする事が出来ません。
「大工さんなのに、無垢材の事を知らない人が居るの?」
あなたはこう、思ってしまうかもしれませんね。
修行期間は同じ年数でも、世の中には様々な大工がいます。
- 親方には教えてもらえない事でも、自分で試行錯誤を繰り返して覚える大工
- ただ親の言われた通り、年季明け(年明け)期間だけ大工として働く大工
どちらも同じ大工ではあるのですが、大工職は一生涯勉強と言われるくらいハードルが高い職です。
年季明けは昔10年、今5年と言われています。
- 5年だけ、ただ働いた事のある大工
- ひたすら試行錯誤したり、向上心を持ってどうやったらいかに出来るかを繰り返している大工
この差は歴然です。
- 腕の差
- 知識の差
- 引き出しの差
- 道具の扱い方の差
- 収め方の差
どれを取っても同等ではなく、親方と子方くらいの差があります。
そんな元大工もネクタイを締めて、スーツを着て元大工社長と営業をする大工も居ます。
家を販売する立場になったら、大工では無い様にも思えます。
もしも大工に頼むなら、これらの事に気をつけてくださいね。
正直なところ、がっつりと大工修行をした大工は無垢材を扱うのが大好きです。
私自身もお寺の様な造りを自分の手で造るのは好きですが、それを良しと思う施主が居るかと言えば。
あんまり、そこまでを望まれる方は少ないと思います。
私の場合は、施主の意見を聞き入れて、バランスよく木材を使う家を建てて来た形です。
限られた予算の範囲で、どうやったら理想の家を建てれるか。
使い勝手の良い設備は、どんどん採用した方が良いのでは無いか。
分かりやすい見積もりを造って、引き算の家づくりをした方がクランアントは楽しいのではないか。
そんなところに注力を注いで、今日に居たります。
業界関係者として、あなたの家づくりの参考となれば幸いです。
6.まとめ
様々な自然素材の家のあり方をご紹介させて頂きました。
何故ここまで私が詳しいかと言えば、会社宛に届くダイレクトメールや、雑誌社からの情報、他県に居る同業者の仲間から知り得る情報があるからです。
私が考える自然素材の家は、建てた施主様が永きにわたって、家族の成長と共に暮らせる家だと思っています。
いつも近くに居て、その成長を見続けたいなとも思います。
自然素材の家を扱う会社を選ぶのはあなた自身です。
この記事を参考に、あなたにとって最良の自然素材の家を建てられる事を望んでいます。
もしもあなたが依頼先選びに不安を覚えたら、中尾建築工房に声を掛けてください。
営業は教えてもらった経験が無いので、営業マンの真似は出来ませんから心配ありません。
でもきっと停滞していた家づくりが、動き始めるきっかけになると思いますよ。