自然素材をお勧めする訳|現場を知っているからこその根拠がある。
私が元々、現場で働く大工の棟梁だった事は。
このブログを永らくご覧になっている方なら、ご存知な事でしょう。
大工の中でも、こだわる大工と言うのは。
作業において、必ず手間暇かける事にもこだわれば。
素材に関しても、適材適所にこだわりを持ちます。
また昨今では、簡易的な作りを工期短縮の為に。
工場生産型の工法を採用しているハウスメーカーや工務店もあれば。
私たちの様に、現場でコツコツと作り上げていく工務店もある。
これ、それぞれの考え方の違いから来てるのだけど。
私の場合は三浦半島で育ち、半島や湘南で活動をして来ました。
そして、大工としても直接自らの手に取って家々を見て来ました。
こりゃー、やっちゃ駄目な造りだよな・・・
そんな思いから、自身がお勧め出来る工法のみで家を建ててます。
そのこだわりは、自然素材が流行っているから。
と言う事ではなく。
海に近いエリアは、昼と夜の寒暖の差が激しいから。
半島や湘南には、独特の湿気が多くあるから。
海と山に挟まれれば、自然と自然の融合になってしまうから。
こんな原因があるからこそ、素材をお勧めする理由があるのです。
海に近いエリアは、昼と夜の寒暖の差が激しい場合。
何が起きるかと言えば、外壁表裏に壁内結露が起きるでしょう。
表面は流れてしまうから、構造体に影響は無いけれど。
外壁の裏側に、結露水の逃げ道が無ければ。
逃げ場の無い水は必ず壁内に侵入して、構造体の木材を侵食したり。
断熱材は真っ黒になり、自沈する事により断熱力の低下も起きるでしょう。
それが快適かどうかと言えば、快適なはずは無い。
だからこそ、手間暇がかかったとしても。
自然素材である無垢の下地材を使って。
この様な外壁の通気を取るのを必ず行っています。
見るからに手間暇の掛かる仕事です。
はっきり言って合板をペタッと張り上げて。
そこにモルタルを塗った方が施工性は良い。
けれども先ほど申し上げた様に。
外壁内の結露は、まず避けられない。
それに合板は木材の寄席合わせを、糊で接着してるだけの建材。
水に濡れれば、その性能は維持する事は出来ません。
それも耐力壁の計算に含まれる合板だとすれば。
その家の強度は一気に低下する事でしょう。
だからこそ水に強い無垢材を下地に使う。
それも、そこに溜まらず流れ出る様に。
また半島や湘南には、湿気が多くある。
湿気があればどうなるか?
ビニールクロスの家を想像してみて頂きたい。
ビニールクロスは別名壁紙と呼ばれます。
色彩を楽しむのであれば、それはそれで良いでしょう。
けれども、窓を開け放ち。
空気の入れ替えをしただけで。
外気は窓から室内に入り込みます。
そして湿気はそう簡単に出て行ってくれるモノではありません。
出て行かない湿気は、室内の上部に居座り。
壁紙を付着させる、糊の成分に影響をきたします。
すると、壁紙はどこかしらから剥がれだし。
見るも無残にペラペラっと剥がれて来るだけ。
糊を塗り直して、再度ローラーで擦ったとしても。
一時は良いだけで、また同様の事になる。
けれども、自然素材の珪藻土では。
室内の窓を開け放し、外気をしっかりと取り込んでも。
必要以上の湿気は、室内の天井や壁に塗られた珪藻土が吸ってくれるのです。
そして吸い込んだ湿気を、カラッとした空気に変えてくれるのが珪藻土のすごい所。
その効果を知ってるからこそ。
私は塗れる場所の全てに、珪藻土を塗れる様にした。
たいていはどこの施工屋さんも、珪藻土は壁のみで天井は塗らずに壁紙。
そのパターンが多いはず。
でも、湿気を対策するのであれば。
天井だって、塗らない手は無いのだ。
そして、半島独特の海や山からの湿気。
これに影響して来るのは、確実に洗濯物の乾燥度合い。
海周辺の洗濯には、午前中が勝負。
午後になれば、海よりも地上が温かくなる為。
風は海から陸に吹いてくる事になる。
その風が吹く前に、乾燥してくれれば良いのですが。
そんなに上手くは乾燥しないので。
私は出来る限りの場所に珪藻土を塗りあげて。
室内でも洗濯物を干せる環境を整えた方が良い。
そうお伝えさせて頂いております。
ちなみにビニールクロスを施工する工務店で、クロスが剥がれたとクレームを入れると。
必ず言い返されるのは。
「室内干し、しませんでしたか?ダメですよ!」
と逆に言い返されてしまうでしょう。
特に自然素材の家が良い。
そう思わなかった主婦の方の、リノベーション相談を受けた時など。
私の説明から、全面珪藻土。
さらにお子さんが多い事から。
こんなモノまで、製作をしてしまった事例もある位。
これはクリーニング店にあるハンガー。
大量の洗濯物があるご家庭で、製作させて頂いたモノになります。
完成時には、奥様が涙ぐんで喜んでいたのを今でも覚えています。
これらも湿気が大量にある三浦半島や湘南独特の家に抱える問題。
それを自然素材で解決出来るなら。
そう思って、今まで採用を続けて来た経緯があります。
またすべてに於いて、自然素材が良いか?!
そう言えば、そうではありません。
自然と自然の融合は、管理のなされていない山々と一緒。
これは私が常々、言い続けている言葉です。
例えば山と言っても。
管理されている山々は、樹木も間伐されて。
日差しも通る事から、すべての植物が生き生きとして見えるでしょう。
けれどもその反面。
管理のなされていない山々と言えば。
木々や竹は、立ちながらも腐れを持ち。
シロアリなどに侵食されつつ、常に湿気でじっとしている状態。
すでに死んでる木々もあるから、そこはもう腐食の嵐でしかなくなる。
これらの木々を倒して、すべてをチップにして。
腐葉土を作るのが目的ならば、まだしも。
これを家に例えたら、どうなる事だろう。
これはもう、倒壊レベルではなかろうか?
だからこそ、外気に接する部分には、自然と自然の融合は行わない方が良い。
と、常々言い続けている訳なのです。
これらのすべては、大工の棟梁だった私が。
実際に古い家々を、この目で見て来て。
自らの手で、家々を治療をして来たからこそ言える事。
素晴らしい山々の樹木を見て。
山の活かし方、山の殺し方を見て来たからこそ言える事。
だからこそ必ず理由があって、その造りにこだわりを持つ。
地域の建築設計事務所として。
地域の家を建てる工務店として。
このこだわりだけは、永遠に持ち続けたいと思います。
でもね。
もしも渋谷の一等地にね。
中尾建築工房の家を建てるとしたら。
私はぶっちゃけ、オススメしません(笑)
アスファルトジャングルに、乾燥しやすい家を持って行ったら。
それこそ過乾燥になり過ぎて・・・
女性は、お肌が荒れちゃいますからね(笑)
と言うことで、自然素材をお勧めしたり、お勧めしなかったりする根拠は。
実際の現場を見て来た者だからこそ。
発する事の出来る言葉なのですね。