自然素材の家を湘南に建てるならヨーロッパの漆喰をおすすめします
湘南では様々な工務店が、自然素材をアピールしているかと思います。
私もその中の一つではあるものの、私は現場を自らの手で触って来た大工の棟梁でした。
私が解決をしたかったのは、家中のあちこちにある湿気をなんとかしたくて今の家を建てています。
それではリフォームやリノベーションを、この手で自ら触って来た中尾建築工房から。
自然素材の家を湘南に建てるなら、なぜヨーロッパの漆喰なのかを解説したいと思います。
1.湘南は海も山もある湿気のパラダイス
湘南に居を構えて住まわれる方たちは、皆さん生き生きして過ごされていると思います。
海もあって山もある。
湘南新宿ラインで職場のある都内にだって、慣れてしまえば十分通勤可能な場所。
サーフィンやボディーボード、ロードバイクやオートバイ、釣りやダイビングなども湘南で楽しめます。
都心に最も近くて、利便性が良いのが湘南の魅力と言えるでしょう。
そんな湘南に憧れて、移住を計画される方が多いのもうなづけます。
ただし移住された多くの方が知る事になるのが、湘南の膨大な湿気です。
いきなり移住して慌てない為にも、こちらに関連記事がございます。
関連記事を読んで頂くと、どれだけ湿気が多いのかが分かるかと思います。
ですからせっかく湘南を気に入って、そこに永住するなら一戸建ての新築を建てる方も居るかと思います。
その際には是非、室内の内装をヨーロッパの漆喰を採用される事をおすすめします。
なぜなら私の経験則から、湘南に多くの自然素材の家を建てて来た経緯があります。
それらの家々は、すべてヨーロッパの漆喰を採用して住まわれています。
そして必ず、おっしゃっていただく言葉があります。
- 家の中はジメジメしない
- 空気がカラっとしている
- カビも生えない
この様な意見です。
ですが漆喰と言えば、日本の中にも本漆喰があります。
なぜヨーロッパの漆喰が良いのか。
それでは比較をする為にも、日本国内の漆喰について考えてみましょう。
2.国産漆喰の成分を知ろう
この画像は、たくさんの漆喰をまとった姫路城です。
今から1300年前に日本に入ってきた漆喰は、戦国時代に防火性と耐久性が認められ、城郭建築などに採用される事になりました。
当時の城郭の中でも姫路城は、漆喰の使われたボリュームと言い、その白さと言い、白鷲城と呼ばれる事になりました。
今でも世界遺産として、しっかりと立ちそびえている城郭の一つです。
私がヨーロッパの漆喰を採用してから、かれこれ18年近くが経過をします。
まだ現役の大工として、現場で働いている頃でした。
当時はリノベーションと言う洒落た言葉は無く、家の改装をするならリフォームと呼ばれるのが主流でした。
そのリフォームの際、湘南の中でも逗子や葉山に建つ家々は、家の中を開けてみると。
それこそ水が滴っていると言ってもおかしくない位、壁の中では水分が多かったのです。
まるで雨漏りを疑いたくなるほどの水分量でしたが、実際には結露によって溜まった水分でした。
もちろん断熱材などは水を吸った事により、黄色の素材が黒に変色をしてしまっていました。
水はカビを寄せ付けてしまう大敵ですし、その水は室内の湿気も多大に影響を及ぼします。
そこで壁紙が主流だったところに、最初に試したのが国産の漆喰でした。
大工の親方で、左官に詳しい方に相談をしたのです。
その親方曰く、漆喰には湿気を吸う力がある
と言う事でした。
ですからまずは最初に、国産の漆喰を試してみる事になります。
ここで、国産の漆喰の成分を見てみる事にしましょう。
- 石灰
- ふのり
- 麻すさ
- 土(粘土)
主成分となる石灰に対してつなぎの麻すさを混ぜたり、土を混ぜたりしています。
それらを接着させる為に、ふのりの様な接着剤が用いられています。
それらを金鏝で左官職人がしっかりと抑える事で、平滑で真っ白な漆喰の壁を作るのが国産漆喰の手法です。
でも私的には、そんな事はどうでも良かったのです。
そもそも漆喰に調湿する性能があるのか、無いのかが知りたかったのです。
実は国産の漆喰自体に、それほど調湿をする力が備わっていない事が分かったのです。
どういう事でしょうか。
実は日本の建築は、昔に比べて合理化された建築が勧められています。
昔の調湿する漆喰の家々と言うのは、今の様な壁下地では無いのです。
- 木舞壁の下地
- 土壁塗り
- 漆喰仕上げ
この様な形で壁を構築していました。
調湿をしていたのは、壁丸ごとに塗られた土だったのです。
事実、リフォームで土壁の家を壊す時、ドア上の下がり壁を外すだけで。
現役大工だった私の力でも、持ちきれないほどの重さが下がり壁にはありました。
壁の厚みは少なくても9㎝はありますので、それだけあったらかなりの調湿効果があります。
ところが現在の家と言うのは、土壁などは採用せずにプラスターボードを使っています。
それらの下地にたったの数ミリ国産の漆喰を塗ったところで、大した調湿効果は見込めませんでした。
これは私の知る限りの観点ですが、日本の漆喰には作業性を向上させる狙いがあると思っています。
- 塗りやすさ
- 滑らかさ
- 意匠性の良さ
これらを優先する意向があるかと思います。
そこに入って来るのが、本来の石灰の良い点を潰してしまう接着剤の存在があります。
さらに国産の漆喰には、天然素材100%をうたっている商品は多々あります。
さらに日本人の性格は、世界的にも見ても大変細かいです。
その細かさは、漆喰に亀裂が入った場合、クレームとして訴求されてしまう原因にもなります。
ですから国産の漆喰メーカーは、クラックがなるべく出ない様に有機溶剤などを含んでいるモノもあります。
施工性では大変良いでしょうし、乾燥を促進するのは良い事だと思います。
しかもしっかりと伸びます。
でもそれらの余分な材料が含まれる事で、炭酸カルシウムの持つ調湿性能が発揮されるのかは疑問です。
結果的には、あまり調湿性能と言う部分では、認められるモノではありませんでした。
3.世界的に見る日本の優劣
漆喰の話からは若干逸れますが、それでも覚えておいて頂きたい事があります。
日本人は性格的に欧米から比較をすると、細かい性格を持っています。
ですから世界から学んだ事を、より細かく考える性質を持っていると思います。
どちらかと言えば、慎重過ぎる様な気もします。
何をするにも慎重ですから、ほぼヨーロッパに遅れを取る事になっています。
例えば建築の例で見て見る事にしましょう。
■建築的観点
世界では、木造ビルの建築が進められています。
ノルウェーでは、9階建ての木造マンションが建設されています。
北米ではオレゴン州が従来6階までとしていた高さ制限を廃止し、高層の木造ビルを合法化した最初の州となり、建築が進められています。
日本ではせいぜい低階層で建築する、鉄と木のハイブリットが最近になって見られる程度です。
現在は国内のハウスメーカーが2040年までに、ハイブリットの一部木造ビルを建設する予定はあります。
ですが実際にはまだまだ先の事ですし、現実となるかは分かりません。
■日本がトレンドを追うのもヨーロッパ
建築分野などのトレンドは、日本が概ねヨーロッパのトレンドを追い続けている傾向があります。
ヨーロッパのトレンドセミナーや建材展などに参加をして、日本国内にそれらを持ち帰っているのです。
輸入商社と取引がありますので、この様な話は良く聞く話です。
それらをまるでオリジナルかの様に、国内で販売をしている商品もあります。
■設備機器
設備機器なども日本製とヨーロッパ製では、性能面で全く追いつけていない状態です。
世界では様々なメーカーがありますが、日本はヨーロッパの情報を毎年取得して、国内にフィードバックする習慣があります。
ですから住宅設備などでは、国産のメーカーでは太刀打ちが出来ない状態が続いています。
キッチンなどの設備機器では、より利便性を求める場合はヨーロッパブランドになります。
- Miele(ミーレ)【ドイツ】
- AEG(アーエーゲー)【ドイツ】
- GAGGENAU(ガゲナウ)【ドイツ】
- siemens(シーメンス)【ドイツ】
- BOSCH(ロバート・ボッシュ)【ドイツ】
すべてドイツのメーカーですが、日本国内での売れ行きは好調です。
使われている方の意見を聞くと、やっぱり使い勝手は大変良いものだと言う事です。
■自然塗料
自然塗料などでも、国産の自然塗料があります。
ですが国産の自然塗料は、あまり高品質なモノはありません。
やはり塗りやすさや乾燥する都合を重視して、揮発性物質を採用して作られています。
結果的に耐久性は、期待をするほどの性能を持つ自然塗料はありません。
ドイツの自然塗料には、全く刃が立たない状態です。
■日本の勿体無い病の典型例
国産の漆喰などに話を戻しますと、国産には本漆喰以外にホタテの貝殻を再利用して、砕いた漆喰などがあります。
この他にも火山灰を再利用したりする漆喰もあります。
または卵の殻を再利用した機能壁もあります。
どれも共通している事があります。
再利用されたモノを塗りやすく、糊などを調合する事によって商品開発をしていると言う事です。
日本の左官職人の技術は確かに素晴らしいモノがありますが、それは塗りやすい素材がある事を前提にあるのです。
つまり細かい性質を持つ日本人は、漆喰に関してはナチュラルさを優先するより、塗りやすさを優先していると思うのが私の判断です。
様々な漆喰を見て来ましたが、私の期待に応える漆喰は国内の中にはありませんでした。
これが湘南に自然素材の家を建てるなら、国産の漆喰をお勧めしていない最大の理由となります。
4.ヨーロッパの漆喰の成分とは
それでは、ヨーロッパの漆喰の成分を見てみましょう。
私は今まで二種類の、ヨーロッパの漆喰を採用してきました。
■ドイツ漆喰
- 珪石
- 大理石粉
- 石灰水酸化物
- メチルセルロース
- 陶土
特に有機溶剤なども含まず、素材を混ぜ合わせただけのモノになります。
このドイツ漆喰を珪藻土の様に塗って仕上げる事で、調湿性能を発揮しました。
ただし開発当初は、下塗り専用のカゼインプレイマーを練り込む事でクラック防止を計っていました。
■イタリア漆喰
- 消石灰
- 無機骨材
- 粉状鉱物色素
- カルシウム
- マグネシウム
特に余計な混ぜ物が入っている訳ではなく、これらの素材で構成されています。
ただし国産の漆喰に比べて滑らかにしたり、塗りやすいと言う訳ではありません。
伸びたりする事もありません。
日本の漆喰が伸びるのに対して、なぜヨーロッパの漆喰は伸びないのでしょうか。
漆喰は、水酸化カルシウム・炭酸カルシウムを主成分としており、もとは「石灰」と表記されていたものであり、漆喰の字は当て字が定着したものである。
日本では土の上に塗るため糊や麻すさなどと混合して作られなめらかな質感になるが、欧州では石の上に塗る石灰モルタルや生石灰クリームが主流であり、下地が硬いため糊などと混合せず強度をだしざらついた質感になる。
風雨に弱い土壁そのままに比べて防水性を与えることが出来るほか、不燃素材であるため外部保護材料として、古くから城郭や寺社、商家、民家、土蔵など、木や土で造られた内外壁の上塗り材としても用いられてきた建築素材である。面土や鬼首などの瓦止めの機能のほか、壁に使用される場合には、通常で3 – 5ミリ程度、モルタルなどへの施工の場合は10数ミリ程度の厚さが要求されている。塗料やモルタルなどに比べ乾燥時の収縮は少ないものの、柱などとの取り合い部に隙間が生じやすいため、施工の際には留意が必要である。
主成分の水酸化カルシウムが二酸化炭素を吸収しながら硬化する、いわゆる気硬性の素材であるため、施工後の水分乾燥以降において長い年月をかけて硬化していく素材でもある。水酸化カルシウムは硬化後、炭酸カルシウムとなるため、当初から炭酸カルシウムを骨材として含有するものが漆喰とされる場合もあるが、一般には水酸化カルシウムが主たる固化材として機能するものに限定されている。
近年では、ホルムアルデヒド(化学物質過敏症の主たる原因とされる)の吸着分解の機能があるものとして注目を浴びている。
顔料を混ぜない(で用いる)白い漆喰のことを、「白漆喰」という[1]。
※ウィキペディア(Wikipedia)より抜粋
ここからも分かる様に、ヨーロッパの漆喰は糊の成分に頼らない様に造られています。
これが炭酸カルシウムの持つ、調湿機能を妨げない理由です。
また日本の漆喰が実際に使われ始めた歴史と比較すると、ヨーロッパでは古代ローマ時代から使われています。
ボンベイの遺跡からも判明されています。
ローマのコロッセオなどの様な代表的な建築物は、大理石や漆喰から構成されています。
漆喰は建築材としてだけではなく、絵の具に石灰を染み込ませて、壁を装飾する手法が用いられていました。
これがのちにルネッサンス時代のフレスゴ画として、確立されたモノになります。
意外かもしれませんが、日本国内の漆喰の歴史よりも、ヨーロッパの漆喰の方が歴史がある事がお分かりいただけるかと思います。
日本が素材を扱いやすくする一方で、ヨーロッパでは素材そのものを上手に使う事を理念としています。
この事からもヨーロッパの漆喰は、漆喰そのものが持つ調湿性能を持っていると言えるのです。
ですから湿気がある場所に、ヨーロッパの漆喰を塗るのは調湿効果を十分期待出来る素材と言えます。
これが私が18年間、ヨーロッパの漆喰を使い続ける理由です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
なぜ、湘南に自然素材の家を建てるなら、ヨーロッパの漆喰を選んだ方が良いのか御理解頂けたかと思います。
ぜひ漆喰だけではなく、ヨーロッパの自然素材を採用して家を建ててください。
湘南で腕をふるった大工がおすすめ出来る、湿気とは無縁になれる本当の高性能な自然素材があります。
そして快適な自然素材の家を手に入れてください。
オンの日は仕事を頑張りましょう。
そしてオフの日は、家族でゆったりと暮らして頂ければ幸いです。